顧客体験は一連のストーリー、組織横断的
ユーザの好き/嫌いという態度や、買う/買わないという意思はそこに至る一連の体験から形成されます。広告に触れて、HPを見て、サービスを利用して、コールセンターに問い合わせて、といった体験はユーザから見ると一連のストーリーですが、企業側から見るとこの動きは組織横断的になります。
抜本的な改善ほど組織またぎになりがち
CXでもUXでも体験上の課題を洗い出して見ると、改善効果の大きい、抜本的な課題ほど組織をまたいだ課題であるケースが多いです。大きな課題のうち、単体の部門内で解決できる課題は優先的に対応します。一方、組織をまたぐ課題は誰も手をつけたがらないため、大きな課題でも残り続けがちです。このようにして残された課題がユーザの体験に致命的な悪影響を与えているケースは多く見られます。
改善が進まない理由
組織をまたぐ課題の場合、責任を持つ部署が不明確であり、改善活動が必ずしも各部署のミッションやKPIと合致する訳ではありません。そのため、自分から積極的に動く動機付けは持ちにくく、部署間で様子見になってしまう事が少なくありません。 どの部署も他の部署に対して活動を強制する権限はなく、それぞれ部署は自部署の優先順位に従って行動するため、なんだかんだ先送りになりがちです。
「相手」を変えるアプローチは成功しにくい
組織対組織の場合、相手の課題を指摘して改善してもらう、というアプローチは多くの場合機能しません。先ほどの権限に加え、感情的な対立も引き起こしがちです。誰しも課題の犯人扱いされていい気分はしないでしょう。さらにその犯人捜しの精度についても問題があります。ユーザ体験における課題は複合的な原因で発生しているため、課題の発生箇所や目につきやすいものが原因の全てではありません。課題を自分の部署の視点から捉えると、どうしても周囲の課題が目に入りやすくなり、全体像から捉えることが難しくなります。
それぞれが「自分」で変わるアプローチ
発生している課題の全体像を各関係者が捉え、ユーザの視点からそれぞれ自身がどうあるべきか、各部署間の関係性がどうあるべきかを能動的に考える、というのが理想的な形です。このためにはユーザ視点に立った全体的な状況の把握と、取り組まなくてはいけない理由への深い納得が必要となります。 このような言い方をすると非常に難しそうなお話しに感じるかもしれませんが、 実現のカギはどれだけユーザになりきれるか、です。
「自分がお客でもイヤだな/嬉しいな」を実感
それぞれが能動的に考えるためには、まず課題の自分事化が必要です。そこでお薦めなのが、 パワーポイントなどで、実際のユーザの体験のストーリーをドラマにしてしまう、というやり方です。手軽なのに没入感のあるコンテンツを作成する事ができます。ユーザになりきって追体験でき「自分が客だったとしてもイヤだな/嬉しいな」という深い共感を生み、同時にその体験に自分の部署がどのように影響を与えているかも感覚的に理解できます。CXというとワークショップ形式でカスタマージャーニーをつくる、という手法が使われる場合が多いのですが、この場合、実際のユーザを理解しているファシリテーターが誘導しないと参加者の頭の中にある想像上のユーザが語られただけ、で終わってしまう事が少なくありません。ワークショップについても、先にご紹介したコンテンツを組み合わせる事でより質の高い共感を得ることができます。各自が自分の部署の立場から離れて、いかにユーザの視点になれる場をつくるか、が重要です。
最後は共感とビジネス成果の合わせ技
ユーザになりきって課題を自分事化した後、さらに背中を押すのは売上への影響です。体験と売り上げの関係性が構造化されて説明されると課題に取り組む理由をより深く納得する事が可能となります。